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 代替医療 vs. 医学の進歩


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1.  代替療法の指針
2.  がんにならない食生活、 ニューズウィークの真意
3.  代替医療の二つの学術集会
4.  代替医療の二つの学術集会(続)

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1.   代替療法の指針
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「患者の本意」
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 近頃,西洋医学を中心とする現代医学とは別の“代替療法”に対する関心が高まっています.書店の家庭医学のコーナーには,ガンの自然療法,食事療法,精神療法,気功等など,ズラリと本が並んでいます.癌を取り巻く医療が患者や家族にとって決して満足すべき状況ではないことの現れと思います.“がんは治せます”と書かれていると藁をも掴む思いですがってしまいます.
 多くの医者は代替療法に関してあまり知りません.また科学的根拠のない治療法ほど医者をよく言わないし,現代医学を誹謗します.その狭間で患者や家族は“いったいどれを信じればよいのだ”とただうろたえるだけです.
 代替療法支持者は、代替療法を西洋医学の観点から理解するのはおかしい,と言い、一方、正統派医学の権威者たちは、代替療法の効果は医学的に解明できていない、などとよく対立しますが、どちらも当っていないようです.
 医学が目指すものは病気をよくすることです.効果が明らかならそれで構わないのです.作用機序の解明を待っていたら間に合わないのです.
 ところが,代替療法のほとんどが,効果のあった症例を宣伝するだけで,どのような患者に治療を行って,その何%が5年生存したといった治療成績に関するデータはほとんど無いに等しいのです.
 あの有名な丸山ワクチンの場合も,数十万人にも投与されているにもかかわらず,誰もが納得できるデータは示されておりません.関係している研究者はもう少し努力してほしいものです.

 そのような現状ですが,どうしたものかと困ったときの指針をお教えしましょう.

 1 癌の診断に関しては西洋医学を学んだ医者しか扱えません.
 2 現代医学で何の障害もなく90%以上確実に治せるとわかっているものに関しては,まず現代医学の恩恵を受けた方がよいと言えます.
 3 現代医学で効果がないとわかっているものは現代医学に固執する必要はないと思います.

 では2にも 3にもあてはまらない場合はどうするか? その場合は,現代医学と代替療法のよいところだけを併用できればそれにこしたことはありません.このことは2の場合にも 3の場合にも共通して言えることです.
 最も重要なことは,代替療法を試みる場合は,必ず現代医学の管理のもとに行うことです.何といっても病気の診断,進行の程度,病勢の把握,一般状態のチェックなどに関しては現代医学の恩恵にあずかるべきです.組織学的な癌の確定診断や,治療効果の判定は西洋医学の独壇場です.
 癌ではないのに癌と診断して,私が治したなどというインチキ療法や,実際は進行しているにもかかわらず,効いていると言われたのを真に受けて,取り返しのつかない事態にまで至るということは避けられます.
 代替用法は無数にあります.医学的にも効果が明らかなものもあり,確かに末期癌を救ったとしかいいようのない事例が多数あるのも事実です。しかし、営利目的のものもあります.代替療法で困るのは効果の予測が困難である点です.書物は一方通行ですから,何よりも患者本意の立場に立ち、偏見にとらわれないで相談にのってくれる医者をみつけることです.
  (名取春彦 KH通信 28号 94/9/1)

 がんにならない食生活
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 世界でも超一流の週間誌、『ニューズウィーク』の日本語版、12月9日号で、10ページにわたって『癌にならない食べ方』が特集で紹介された。がんと食生活との関係を現代医学がどのようにとらえるか、という誰もが高い関心を抱く課題についてのこれまでの研究成果の総まとめともいえる。この記事を独自の観点から補足し紹介しよう。

 今から30年前、アメリカ大統領ニクソンが「がんとの戦争」を宣言して以来、アメリカはがん研究にそれまで以上に巨額の資金を投入してきた。その結果、多くの新しい知識が得られ新しい治療が開発されてきた。
 その一つに、食品に含まれる化学物質の研究がある。ごくありふれた野菜や果物の中に、がんの発生を妨げる化学物質があることが続々と発見され、動物実験で証明された。人々はがん化学予防に関心を寄せた。誰もが話題にした芽キャベツ騒動も、黄緑食野菜に含まれるβカロチンブームもそれと関係している。
 ところが、アメリカのがん死亡率は30年後の今もほとんど変わらない。乳癌、大腸癌、前立腺癌の死亡率は、なおも世界の多くの地域の5〜30倍である。
 世界癌研究基金とアメリカ国立がん研究所の共同研究は、「がんの3分の1は食生活が関与している。これはたばこの関与率とほぼ同じである。」と報告している。食事によるがん予防に関する市民の関心は高く、『食べて乳癌をやっつける』『ゲイナー博士の癌予防法』など、正しい食事を指南する本がよく売れている。この2つの著者のゲイナー氏はニューヨークのストラング癌予防センターの部長を務めるがんの専門家である。
 しかし、癌の専門家でない著者によって書かれた本に対しては批判も強い。『乳癌にならない食事』という本はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストで1位になったこともある。この本に対して「乳癌と闘う全米連合」は「ひどく無責任」と決め付け、「科学と保健を考えるアメリカ人会議」は「女性にとって有害」な本と非難している。ただし、『ニューズウィーク』誌は、後者の団体は「薬品や加工食品の業界団体をバックにもつ。」と極めて公平である。スローン・ケタリング癌センターは「データを恣意的に使っている。確実な証拠はない。」と批判している。
 アメリカでは今、食生活を改善すべきだとする意見と、それは意味がないとする意見とが対立しているようだ。アメリカ癌協会の関係者は「今わかっていることを実行するだけで癌患者は減る。」としているが、『ニューズウィーク』誌はこの立場に立っている。

 『ニューズウィーク』誌は、読者が自分で理解し、判断できるように、食事による発癌予防のメカニズムを説明している。そこでは、細胞DNAの傷が癌細胞の発生につながり、癌細胞が血管を手にいれると増殖し続けるという癌発生の過程をわかりやすく解説し、さらに、活性酸素がDNAに傷つけたり、そうした発癌因子を排除する仕組や血管新生の過程などに、食品成分が大いに関係していると説明する。例えば、野菜、果物にはビタミンC、E、βカロチンなどの抗酸化物質が豊富に含まれており、それが活性酸素を中和する。
 最近はさらに強力な抗酸化物質が発見されている。赤ぶどうに含まれるレスベラトロールはマウスの発癌を抑える。緑茶のポリフェノールの1種エビガロカテキンガレートの活性酸素を中和する力はビタミンEの20倍、ビタミンCの500倍と推定される。ニンニクやタマネギに含まれる硫化アリルは発癌物質を人体が処理するのを助ける効果がある。ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどの野菜に含まれる刺激的な味の成分であるスルホラファンも発癌物質を排除するのを促進する作用がある。そして、それらの作用機序もわかりやすく解説する。
 大豆成分のイソフラボンは体内の女性ホルモンと競合し、その働きを弱める。乳癌の発生には女性ホルモンが関与しており、大豆成分はそれを抑える。補足すると、同じように女性ホルモンの働きを抑えるタモキシフェンという薬が、従来から乳癌治療に使われてきたが、この10月、乳癌予防に使用することがアメリカで承認された。大豆食品には副作用がない。タモキシフェンには静脈血栓、肺塞栓の危険を3倍に、子宮体癌の危険を2倍に高めるという副作用がある。どちらが優れているだろう。
 大豆やウコン、ニンジン、ブドウなどには血管新生を阻害する物質が含まれており、癌細胞の血管成長因子の放出を抑えるというデータもある。
 調理法が食品成分の効果を左右することもわかってきた。トマト色素のリコピンは前立腺癌、乳癌、肺癌、消化器癌を抑制する効果があると報告されているが、この物質は熱を加えないと吸収されにくいことがわかった。ニンニクの効果は加熱の影響は受けないが、きざんでから10分以上経過した方が効果がある。

 食事によるがん予防を考えるとき、発癌を予防する食品成分に注目するだけではなく、発癌を促進する食品を避けることも大切である。脂肪摂取量が多いとがんが増えるということは従来から言われてきたが、脂肪の量だけではなく、脂肪の種類も重要であることがわかってきた。
 肉やバターに多い飽和脂肪酸は心臓には悪いががんとは直接関係はなさそうである。不飽和脂肪酸の中で、オリーブ油に多い単価のものは心臓にもがんにもよいらしい。多価のもののうち、リノール酸はがんの成長を促進するらしい。一方αリノレン酸はがんと心疾患のリスクを共に減らすようである。
 どの食品にも多種類の脂肪酸が含まれている。大切なのは脂肪酸の種類ではなく、そのバランスである。リノール酸よりもαリノレン酸の比率が高いタイプが健康によい。このタイプの食品の典型は魚である。魚以外では亜麻の種子の脂肪である。ただし、αリノレン酸を採りすぎると血液が凝固しやすくなる。 

 これらは、いずれも動物の発癌を抑えたりするなど科学的データの裏付けがある。現代医学におけるがん化学予防の研究成果といえるが、いったん大きくなったがんは食事では治せない、と釘をさしている。これは、現代医学の枠からはみ出た玄米菜食などの「がん食事療法」を、アメリカ医学界はなおも認めていないことと関連している。『ニューズウィーク』誌はアメリカ医学界擁護の立場にあることを明確に示したものと理解できる。
 ところが注目すべきことがある。本文には一言も触れていないが、「食事を変えたら病も消えた」という大きなキャプションで、がんを食事で克服した著名人4名を写真付で紹介している。これは、上記の「がんは食事では治せない」とは明らかに矛盾する。『ニューズウィーク』誌は、本当は「食事でがんを治せる」ことを読者に伝えたかったのではないだろうか。
 はっきりとは述べていないが、本文ではファーストフードを食べ続けることの問題を何度も匂わせている。そして、脂肪食の解説図の説明文の隅に、食品製造過程で生じる多価不飽和脂肪酸の一種でスナック類に含まれるトランス型脂肪酸が、「心臓病に加え、乳癌の原因にもなる可能性が。」という具合にあいまいに触れられている。他にも図の小さな説明文には「清涼飲料は栄養分がなくカロリーだけ。それよりも緑茶を飲もう。」「フライドポテトは我慢しよう。」「チーズケーキは控えめに。」など、なるべく目立たないように読者に重要なメッセージを伝えるための涙ぐましい努力の跡がうかがえる。
 そして、最もショッキングな数字も本文ではなく図に示されている。一生のうちに大腸癌と診断される人の割合は6%、食事と生活改善によるその発症低減の可能性は66〜75%、前立腺癌ではそれぞれ17%、10〜20%、乳癌の場合は女性の14%で、低減の可能性は33〜50%、肺癌では7%、90〜95%とし、食生活の改善の緊急性を訴えている。
 発癌に関しては悪玉とわかったリノール酸だが、それを多く含む食品の代表であるコーン油については本文では触れていないが、図中にはきちんと述べている。食品業界を刺激しない工夫であろう。この特集記事は本文よりも図の方に本当の中味がある。

 がん予防の最も簡単で、しかも害がなく効果的な方法は食生活の改善であることは、もはや誰の目にも明らかである。それをはっきりと言えないのは、医薬、食品業界と、業界とつるんだ医学界という強大な力の圧力があるからであろう。しかし、そういった圧力のもとでも『ニューズウィーク』誌なりの苦闘の跡が見える。
 日本も同じ状況だと思われるが、日本のメデイアや医学健康雑誌が抱えるもっと深刻な問題は、ここまで理解できる編集者や書き手は育っていないことである。医学、健康情報は、大学教授や権威者たちにすっかり依存してしまっている。「彼等の意にそぐわないことを記事にすると、今後情報を提供してもらえなくなる」と編集者たちは言う。自分たちで記事も書けない。まったくなさけない話である。 
 アメリカがん医療でニクソンが出れば、レーガンも出さなければならない。レーガンはがん治療を食事療法に託したと噂され、がん食事療法に対する市民の関心はますます高まった。アメリカ議会はそうした声に応えようとするが、アメリカ医学界の反発は強い。アメリカの研究機関も医療機関も、医学教育も医療に関連した利権も、全てはなおもアメリカ医学界が握っている。アメリカメディアは、政府機関や大統領の批判は堂々とできても、医学界や業界は敵にはまわせない。そのシステムにあるアメリカ医学が世界の医学のスタンダードになっている。
 日本の厚生省や、国立ガンセンター、大学病院のがん研究の権威者たちは、がん予防のためにやっていることは、たばこ発癌説を叫び、がん検診を呼びかけるだけである。食生活については、「バランスのよい食事を」と申し訳けに言うだけで、スナック菓子、インスタント食品、レトルト食品の採りすぎには沈黙する。産業廃棄物や排気ガス、残留農薬、食品添加物の健康被害は見て見ぬふりをする。ここもアメリカに倣ってのことだろう。
 (名取春彦 KH通信 78号 98/12/14)

3 代替医療の二つの学術集会
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 98年の11月は金沢で日本代替医療学会の第一回大会が開かれ、引き続いて12月には東京で、日本代替相補伝統医学統合学会の第一回大会が催された。どちらも、新聞やジャーナルに事前に紹介されていたので、報道関係者もたくさんつめかけた。代替医療に対する期待が大きいことは、多くの参加者でにぎわったことでも示された。これら二つの集まりに参加して、感じたことを述べながら、代替医療というものを考えてみよう。

 まず金沢へ出かけた。会場受け付けでさっそく、大会には会員にならなければ参加資格はないと言われた。
 年会費1万2千円はメジャーな学会なみに高い。それに入会金6千円が必要となる。これは、気に入らないからやめます、といっても、学会側は6千円儲けるということである。何と閉鎖的で質の悪い学会であることか。
 学生は参加費2千円である。学生には入会資格がないから、入会しなくても参加できるということである。報道関係者には特別の受け付けがあり、特別待遇のようであった。
 プログラムを見て始めてわかったが、第一回学術集会の主題は「薬効食品の医療への応用」であった。招待講演、特別講演、教育講演、パネルデイスカッションのほとんどが、すでに商品化されている健康食品の研究の紹介であり、一部に申し訳け程度に代替医療の現状が報告された。一般演題は全てポスターで扱われ、それも大部分が市場の健康食品の効用についてのものであった。
 プログラムには賛助企業の一覧があり、その企業数を数えてみると96企業もあった。企業展示のコーナーがあり、そのブースの数は80を超え、これは例年の日本癌学会なみの規模である。演題数が数十の学会と、演題数2千を常に超える学会とが、企業展示の規模だけは同じなのである。
 2日目は一般市民にも公開され、各企業ブースは健康食品の宣伝合戦に忙しかった。なんとそこでは一般の人への購入契約までさせていた。
 この学会は、まさに健康食品企業におんぶにだっこの学会なのである。週刊誌や新聞には常に健康食品の広告が氾濫している。ということは、広告を見てその商品を買う読者がいるということなのだろう。健康食品業界は全日本健康食品協会という団体をつくっており、月2回健康産業流通新聞を発行している。これから発展が見込まれる業界なのであろう。
 考えてみれば、正統派の医学の学会もスポンサーに依存していることに変わりはない。化学療法関連の学会などは、製薬メーカーの製品の正当性を主張し宣伝するための集まりのようなものである。今の学問はスポンサーがいなければ発展は望めないのである。
 この学会でもう一つ気になることは、会長を始め、常任理事などの役員がことごとく金沢大学関係者や、金沢周辺の医師で固められており、講演者の大多数も同様に金沢の人であるということである。この学会の沿革をみると、研究会が8年前に発足し、今回から学会に発展したとあるが、学術報告の内容からはどうみても一地方の健康食品に関心のある研究者たちの研究集会といった性質のものである。
 さらに、この日本代替医療学会の性格を決定付けるのは、この学会が掲げる代替医学・医療の定義である。「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称。」とある。ということは、あくまで西洋医学が正統なのであり、その体系の中で未検証なものが「代替医学」であり、まだ正式には患者に使われていない医療を「代替医療」と呼んでいるのである。開発中の抗ガン剤の臨床試験も「代替医療」ということであり、現実にガンを完治させたという事例の豊富なガンの食事療法なども、未検証で正式には臨床応用されていないのだとしているのである。この学会は西洋医学一辺倒の現代医療への不満が、患者たちの代替医療への関心を呼んでいるということを理解していない。
 次年度からの学会が他の地方で開催される可能性はあるのだろうか。また、主題を健康食品以外にもっていくことができるのであろうか。それが一地方の仲間うちの研究会から脱皮して、実質的な学会となる鍵であろう。しかし、代替療法に対するこの学会の理念が、今後広く受け入れられるかどうかはなお疑問である。

 12月には東京での 日本代替相補伝統医療連合会議(JACT)第1回設立記念講演会に参加した。こちらは百花繚乱の代替医療、伝統医療をなんとか統合して大きな力を持とうという目的のようで、参加は会員以外にもオープンであった。
 「各学会・協会の現状と未来」という基調報告では、この会議を構成する10の団体が報告をした。その10を列挙すると、日本温泉療法医会、日本ホリステイック医学協会、日本東方医学会、日本東洋医学会、アーユルベーダ研究会、全日本鍼灸学会、CAMU Network、日本歯科東洋医学会、イスラム医学研究会、国際生命情報科学会である。報告では10の団体の理念と活動の現状が報告された。
 これらの中で二つは、その理念からJACT全体を包括するようである。ホリステイック医学協会は、帯津良一氏が会長を務め、そもそも人間を全体として見ることが基本理念にあり、それは東洋的な発想から生まれ自然治癒力を大切にする、とする。次に、CAMUとはComplimentary Altarnative Medicine and Users を表わす。この代表の藤波氏は帯津氏の前に1997年まで日本ホリステイック医学協会の会長を10年間務めた人である。これら二つは基本的な考え方は同じである。
 続いての基調講演は帯津氏と渥美和彦氏が行った。帯津氏は彼の考え方と彼の病院での活動を紹介した。その中で、西洋医学、代替医学、相補医学をたして合わせるのではなく、混ぜ合わせて第3の医学をつくる必要があり、それが統合医学であると強調した。現実には患者が望めば何でも許可する「何でもあり」の医療をやっていると言う。
 渥美氏は東大教授のときは心臓外科での先端医療の権威であり、今も医学界の大御所である。彼は、現在医学は曲がり角にあり、西洋医学の統計的、平均的医療から、個人に適した医療をに変えなければならない、この運動が国民運動になるよう期待していると述べる。アメリカの代替医療を取り巻く急激な変化とその背景を紹介し、すでに東洋的な医学が生活に入り込んでいる日本でこそ、西洋医学をうまく取り入れた統合医学が確立されていく土台がある、と熱弁を奮った。
 特別講演では岐阜県知事、梶原拓氏が「南飛騨国際健康保養地」の構想を話した。この会議は政治家まで取り込んでいるのだ。渥美氏によると、会議へはもと大臣と次官が参席しているそうである。
 パネル討論ではこの会議の熱意と性格はさらに明確となる。印象に残った発言や議論を列挙してみよう。/東洋医学の脈診を人口心臓を使って解析したが膨大なマトリックスを駆使しても証明できないものがある。/科学は唯一物差しではない。万有引力があることはわかるが何故かはわからない。それでも科学という。パラダイムの飛躍が必要である。
 /いかさま医療をどう区別するか。アメリカではいかさまも土俵に上げて評価しようとしている。(渥美).香の好き嫌いがHLA遺伝子の塩基の違いによるということがわかった。個人の違いはどうしてもあるのだから個人に合ったものを取り入れればよい。・@統計的方法を踏襲して証明。A証明できない部分はさらに改善した方法で。Bアメリカでは個々の評価はファミリードクターに任せる。そしてNIHに報告。その蓄積で評価し区分けしている。.西洋医学では薬の効果はどの個体でも一律、鍼灸では生体側の条件を中心に決める。・風邪をひいたら医者の薬の量は決まっている。個人によって、また生体リズムによっても違うはずだ。・統計処理は無理がある。進行肺癌でも何でもありでいろいろ試すとよくなる。何が効いているのかわからない。今の科学でわかるものは押さえるが、効きそうとみればやればよい。わかったように言うからいかさまになる。わからないものはそういうつき合いをすればよい。(帯津)
 /代替医療、相補医療の分類は?(渥美)・欧米では周辺医療から非通常医療、それから代替医療へと変遷してきた。相補医療は通常医学を補うものであって、まったく別。しかし、実態は同じで問題を共有している。イデオロギーにとらわれず、懐を深くすることが大切だ。従って境界はあいまいでよい。
 /この連合会議の目標は?(渥美)・各種健康食品の有効性、適正利用のガイドラインは分科会でやっていけばよい。・何でもありの会が分科会で規制するのはよくない。最初は「ノー」の会ではなく、「あり」の会であるべき、派生する会はいくらあってもよい。「ノー」は独立して言えばよい。
 /大学の教授連中は西洋医学では不足と思っているが自分ではやらない。・政治家、官僚、医者、学者はいつも遅れる。市民が最も進んでいる。その次に進んでいるのが企業である。・大学は最先端ではない。医療の最先端は市中病院にある。大学には期待しない方がよい。・富山医薬大、女子医大に講座がある。連合会議が気運をつくればしだいに広がる。・大学の医者は今は隠れキリシタンである。早く表てキリシタンでいいという雰囲気になればよい。
 活発に議論がなされたのは司会の渥美氏によるところが大きい。JACTの代表であり、その学識と思考の柔軟性からまさにJACTの中心人物であると思われた。フロアからの発言も十分にとり上げられた。
 /大学で地域医療をやっているが地域医療は漢方医学を取り入れないと成り立たない。ところが大学では取り入れられない。・それに対し「よくわかった。学長の高久さんに言っておく。」(渥美)/機能食品の業者だが、優秀な業者は理論武装している。電話でフォローする窓口もある。業者の資料も参考にしてほしい。・分科会でメカニズム、有効成分など、科学論文も出し合ってやってもらう。/政治家は大衆の意見を代弁する。アイゼンハワーは軍事産業コンプレックスをつくったように、今代替医療産業コンプレックスができようとしている。そうして時代は変わっていく。ヒューマンサイエンスの会に期待する。
 /がん体験者のボランテアの会で9年活動している。患者は何かにすがりたい。ビタミン療法に100万円単位でお金をかける。再発すれば、100人のうち2〜3人治ったと聞いただけで患者はすがる。300万円とか500万円とかをかける人もいる。対応してほしい。アメリカの調査のきっかけもここにあった。
 /早く、簡単に、安く、痛くなく、確実に治る、これが理想の医学。何でもありの医療はそれに近い。情報が正しいとは医者の仲間うちの論理であった。科学で何でもわかるというのは錯覚であった。東洋医学も西洋医学もわかるものはわかるし、わからにものはわからない。個体は千差万別なのだから、合う合わないは必ずある。テレビのチャンネルのように選択できるようになればよい。その間はブラックボックスでよい。類形別に分けられるような成果を期待する。(岐阜県知事)
 JACTは、ホリステイック医学協会などのこれまでの活動には限界を感じ、発起人たちが医学界の大御所、渥美和彦氏を代表にすえ、統合医学という名の基に、より多くの団体に大同団結を呼びかけ、大がかりに活動を展開しようとしたもののようである。
 (名取春彦 KH通信79号 99/1/11 次号に続く)

4. 代替医療の二つの集会(続) 
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 98年の11月は金沢で日本代替医療学会の第一回大会が開かれ、引き続いて12月には東京で、日本代替相補伝統医学統合学会の第一回大会が催された。何故二つが同じ時期に発足したのか、何故統合できなかったのか。
 主導権争いの感は免れない。しかし理念からみると代替医学を大きく網羅するのは東京である。性格からいうと金沢は健康食品学会であり、代替医療の看板にふさわしくない。金沢がもし理念を変更するなら東京の統合医学の一つに加わるのが良いと考える。そうでなければ代替医療という名称は使ってもらいたくない。
 代替医療への関心の高まりはアメリカの動きの影響である。いわばアメリカの流行に倣ってのことである。
 アメリカでは90年代に入って、患者たちの間に、自分の信じる治療を患者自身が選ぶ権利がある、医学界の言いなりはもうご免だ、とする権利運動が盛んになった。今アメリカでは、市民が医学界を相手に対抗しようということを乗り越えて、直接議員などに政治的に働きかけ、医療を変えようとしている。
 その成果があって、食品医薬品局(FDA)は代替療法をかなりのところまで認め、1992年には国立保健研究所(NIH)には代替医学局(OAM)までつくられた。それに尾を引いて、代替医学を扱う部門を儲ける医科大学が軒並み増加している。今のところはいずれも試験研究的な意味付けをしているが、その存在を公に認めたことには変わりはない。アメリカの動きは患者の人権運動なのでり、その高まりは医療者をもそれに応えなければならない状況に追い込んだと言える。
 これは、1920年代や50年代にアメリカに起きた代替医療を求める動きとは大きく異なる点がある。医学界の内部をもゆるがしているのである。現代医学の矛盾、特にその一つから生ずる医療費の高騰など、医学界内部でもこのままではこれらの問題を解決できないこと、解決できなければこれまで通りに利権に甘んじてはいられないことは明らかであり、かといってうまい処方箋があるわけではない。彼らは代替医療をとり上げざるをえなくなったのである。もはやこの動きは止められない。
 健康食品業界の成長も影響しているだろう。医薬業界一辺倒であった医学研究のスポンサーに新たな業界が参入した。スポンサーに支配される医学の国家規模の再編が始まったようである。
 アメリカの動きはすぐに日本に波及する。しかし、今のところ、患者団体や市民運動が現代西洋医学の矛盾までは目覚めてはいない。彼らは未だに、カルテ開示だ、インフォームド・コンセントを守れ、の実りのない運動にとどまって、手続きをしっかり踏めば拡大手術も抗ガン剤も人体実験も受け入れようとしている。患者たちが医学界や、医療産業のえじきになり絞りとられていることも、自分たちが医学界の奴隷になっていることすらも気付かない。多くの代替療法関係団体や関係者たちは、患者のためというよりもイニシャチブ獲得のために、このアメリカの動きを先取りして先走っているようである。
 二つの学会の共通点は、「何でもあり」である。アガリスク、プロポリス、椎茸えきす、大麦若葉、さめ軟骨、玄米エキス、等など、百種類もの抗ガン食品を一人のがん患者が全部摂取するなど到底不可能である。ヨガと気功どちらも選択し、実行することは実際問題無理というものである。
 こんなに選択肢があれば、どれを選んだらよいのか迷い困るのが当り前である。どれかを選ぶために、一つ一つ片っ端から説明を聞いて理解するだけでも大変なことである。さらに、健康食品の中には、がんに効果がある、とはうたってないにもかかわらず、そのようななイメージをよいことに便乗して売り上げを延ばそうとするものもある。患者は困っている。患者のために交通整理が必要である。
 「何でもあり」という医者は、自分が患者になったとき、もしくは家族が患者になったとき、何かを基準にその中からめぼしいと思うものを選択し、残りは切り捨てるはずである。
 意見を求められて、「何でもよい」と答えるのは、自分の意見を言わないということである。「何でもあり」とは患者にとってはきわめて冷めたい言葉なのである。それは、医者が代替療法師や代替企業のことを気使って、患者をかえりみないことを表わしている。いいかえれば、患者よりも代替医学界や業界の方が大切なのである。はっきりものを言うということが、患者にとって最もあたたかいはずである。
 おかしいものはおかしいと言わなければ発展はない。代替療法家は自分のやっていることが一番良いと信じているからそれをやっているはずである。お互いがそのように感じながらも黙っている。もし、ただ単に職業としてやっているというのなら、学界に出向いて発言するはずはないし、発言すべきではない。
 ただし、論争において相手を理解もしないで攻撃してはいけないのは民主主義における論争のルールである。批判するなら理解の上でやらなければならないから、これは骨の折れる仕事である。その割には得るものは少ないし、逆に非難を受けることもある。そんな割の悪いことは誰もやりたくはない。
 一部の代替医療ブームの中でもう一つ気掛かりなことがある。西洋医学で難無く治癒が期待できるものまで、そこから遠ざけ、治癒の機械を奪ってしまうことである。初期の皮膚がんや喉頭がんなどは、西洋医学でほぼ100%目立った副作用もなく治せる。発ガンを招いた土台そのものを治したければ、見えるガンを確実に叩いてからでも遅くはない。手術や放射線や薬は全身の自然の治癒力を落とす、と信じ、これらの治療を拒絶し代替療法に走って、治るものも治らず不幸な転機をたどる患者が余りにも多い。代価が余りにも大きい。
 ではどのように判断すればよいか。患者が医療を選択するときの比較の基準は、現代医学も代替療法も共通する。その方法のメリット、デメリットを整理して冷静に比較することにつきる。メリットとは治療成績、生存率や、いかに症状がとれて楽になるかなどである。デメリットとは副作用や苦痛度など治療に関わることだけでなく、肉体的、精神的、経済的負担も含まれる。これらの基準は全ての患者に共通するものではない。個人の感じ方や価値観、おかれた状況によりまちまちである。
 また、手術や抗がん剤治療などの現代医学も同じ基準で先入観なく比較すべきである。そうすれば治癒の見込みのない拡大手術や、効果の期待できない抗がん剤治療にいたずらに期待してしまうことはなくなると思われる。
 代替医療に関しては、マスコミもポリシーを持って報道してほしい。それで想い出すことがある。97年のことである。新聞に、ガン代替療法「最新免疫療法の現状」というテーマでシンポジウムが催されるとあった。主催は「ガン治療を考える会」で、毎日新聞社の後援となっている。場所は東京ビックサイトで日曜日の午後、たっぷり時間をとってあるので、代替療法の現状についてかなり突っ込んで議論されるのだろうと期待して出かけた。参加してみると、それは終始、健康食品、舞竹エキスの宣伝であった。
 現職のテレビアナウンサーを司会に、海外の研究者や大学教授などを招いての、それはなるほど、形式は立派なシンポジウムであった。講師の一人はアメリカがん治療センター総病院長の肩書を持つ。この施設、一見がん治療の権威あるセンターのように思わせるが、89年共同で創設された私的財団である。私は聞いたことはない。もう一人の講師は神戸薬科大教授の農学博士で舞茸の研究者である。
 舞茸の正当性ばかりを示す講演の後は、イギリスの企業の女性若手の舞茸の研究者と関西の若手の医者を加えてのパネルデイスカッションである。ここでもがん医療の一般常識的なこと以外は再び舞茸の宣伝であった。
 パンフレットによると、主催者の「ガン治療を考える会」とは、「国内外のガン、その他慢性疾患治療中の方に、マイタケを活用した免疫療法に関する情報提供などを行うことを目的とした任意団体」、ときちんと記されていた。休憩時間にはロビーで舞茸に関する本や製品が宣伝、販売されていた。一般の人たちには宣伝が効いたようで、人だかりができていた。会場に毎日新聞社員を見かけたので、抗議をした。
「立派な会場で大勢の人を集めて一企業が製品の宣伝をするのを、おおやけのシンポジウムを装って大新聞社が後援するとは何事だ」
「社に報告しておきます」
 その後、音沙汰はない。    
 (名取春彦 KH通信80号 99/1/25)


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